の一般常識入門 


<料理編>



「そういえば、<料理>がどんなものが知ってる?」

「知識としてなら知ってますよ」

「じゃあ、魚の焼き方分かる?」

「一応分かります」

「じゃあ、焼いておいてもらえる?私は野菜をとりに行ってくるから」

「分かりました」



30分後



「キャー!ちょっと!魚焦げてる!焦げてる!」

「え?今焼いてるんですけど?」

「......、あなたその黒焦げの魚食べるつもりなの!」

「...食べれないんですか?」

「.........」

「.........」

、料理を何だと思ってるの?」

「...食料を切ったり、焼いたり手を加えたものじゃないんですか?」

「つまり、どこまでが食べれる状態かは知らないのね?」

「食べれる状態と食べれない状態があるというのを、はじめて知りました」

「......!明日料理の本買ってくるから勉強しなさい!」

「あ、はい。分かりました」










 <呼吸編>



「そういえば、あなたちゃんと息してるの?」

「してませんよ」

「......しなさいよ」

「しなければならないものなんですか?」

「少なくとも生きてるうちはするものよ」

「私は生きてませんよ。稼動しているだけですから」

「あなた、人間の動きをコピーするようにできてるのよね?」

「はい」

「だったら息をしている振りでもしなさい。そのままだとまるで動く死体よ」

「そうなんですか?」

「ええ」

「分かりました。息をしている振りをします」

 スーハー スーハー スーハー

...それは息じゃなくて深呼吸よ。ちょっと、そこら辺にいる動物で息の仕方観察してらっしゃい」










 <言葉編>



「アサヒさん、鳥が湧いて出ました」

、鳥は湧いて出な......すごい数ね」

「はい。さっきテラスに出たら、周りの木から湧いて出ました」

「...、普通鳥に湧いて出るという表現は使わないのよ」

「え!でも湧いて出ましたよ?」

「そのようね」

(動物に好かれるのはいいハンターの証みたいなものだけど...猛禽類から小鳥までって、これはちょっと無差別すぎよね)

「こんな近くで鳥を見るのは、はじめです。...さわってもいいものなんでしょうか?」

「大丈夫だと思うわよ」

一番大きな猛禽類のほうへすたすたと歩いていく。


(あの子結構怖いもの知らずね。あ、撫でてる。フレイムウィーニー(鳥の名前)のほうも気持ち良さそうって、あら?)


 バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサ...
  ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ...


「うわっ!えっ!えっ!え?!」





「...嫉妬されるくらい好かれるって言うのもすごいわね」


倒れているの上に鳥たちが群がっている


「まあ、大丈夫でしょう。、私朝ごはん作ってくるから、その間にこの子達どうにかしなさいね」

「...............はい」



結局、が朝食を食べれたのは2時間後となりました。












<食事編>



、そういえばさっきミルク飲んでたけど大丈夫なの?」

「?何がですか?」

「食べ物を食べて大丈夫なのかってことよ」

「それなら大丈夫ですよ。体中で水にまで分解されますから」

「へー、すごいわね。あれ?それじゃあ栄養はどうなるの?」

「無くなりますよ。私にとって食事は、人にとっての嗜好品のようなものですから」

「嗜好品...それなら一応味は感じられるのね」

「はい、味覚センサーが付いてますから」

「ところで...栄養が無くなるってことは、カロリーも...」

「無くなります」

「じゃあ、太らないのね(ちょっと羨ましいかも...)」

「いいえ、大人型に変形すれば重くなりますよ」

「......変形?......変形できるの!!」

「できますよ。半日くらいかかりますけど。もう少し小さくなれば、軽くもなりますけど」

「......体重も自由自在?」

「はい」

「.........(私だって結構動いて体形維持してるのに!!)」

「どうかしましたか?」

「ああ、なんでもないのよ。気にしないでね(少し引きつった笑みで)」

「?...分かりました」












 <成長編>



......タンタンタン......クツクツクツ......(料理中)


「ふ、あーぁ。おはよう、。コーヒーもらえるかしら?」

「おはようございます。ちょうどドリップし終わったところですよ。(カチャリ)どうぞ」

「ありが...と...う?」

「?、どうかしましたか?」

「何で髪の毛がそんなに伸びてるの?!」

「ああ、そのことですか。昨夜、アサヒさんが髪をのばしたらどうかと言ってたじゃないですか。体と違って、髪なら3時間もあれば変えられますし」

「へー、そうなの。便利ね」

「そうですね。人は専門の場所に行かないと伸ばしたり、縮めたりできないみたいですし」

「...はぁ!ちょっと待って!縮むって何?!専用の場所って何?!」

「え?3日前にアサヒさんが言ってたじゃないですか。『ちょっと髪を短くしてもらってくるから、留守番お願いね(アサヒの音声再生)』って」

「いや、わざわざ私の声で言わなくていいから...」

「分かりました」

「...って、そうじゃなくて、私が短くしてもらうって言ったのは、美容院で髪を切ってもらうって言うことよ。美容院では、付け毛やカツラは出来ても髪を伸ばすことは出来ないのよ」

「じゃあ、どうやって伸ばすんですか?」

(そこから説明しなきゃならないのね...)



この後、アサヒによる説明が一時間半続く











 <学習編>




...パラパラ...パラ...パラパラパラ...パラ...

「さっきから何をしてるの?」

「本の内容を記録しています」

「そんなパッと見ただけで覚えられるものなの?」

「...覚える?」

「だって、『本の内容を記憶してる』って言ったじゃない。覚えてるんじゃなかったの?」

「<記憶> ではなくて《記録》ですよ。」

「え?どこが違うの?」

「<記憶>は経験や学習したことを覚えることですから」

「じゃあ、《記録》は?」

「《記録》は書いたり、写したりして残すことですから」

「...書いてないじゃない」

「私の電脳に、ページそのものを映像として写してるんです」

「へー...こっち(の本の山)はもう終わったの?」

「はい」

「(適当に一冊とってページをめくる)...、この本の127ページの26行目の5文字は?」

「“こ”です」

「242ページ11行2文字、8ページ34行16文字、398ページ32行20文字、422ページ19行38文字」

「“よ”、“ (スペース)”、“い”、36文字までなので存在しません」

「...すごいわね」

「ちゃんと《記録》してますから」

「...他の人に言うときは《記録》じゃなくて、<記憶>って言ったほうがいいわね」

「?、なぜですか?」

「人間は基本的に頭の中に《記録》は書けないものだからよ」

「へー、結構不便なんですね」

「............」












 <感覚編>




「アサヒさんこの小さいナイフ借りてもいいですか?」

「いいけど、何に使うの?」

「この(料理)本に載ってる野菜の飾り切りをやってみようと思いまして」

「(結構凝り性よね)出来たら見せてね」

「はい。では、お借りします」


...タン...タンタンタンタン...タタン...ザクッ!


「...ザクッ?」


...パタパタパタ...


「アサヒさん、雑巾どこですか?」

「え?(の方を振り返る)ッ!キャー!!血だらけじゃない!!」

「はい。だから掃除をしようかと...」

「それより治療が先でしょーが!!傷を見せなさい!」

「傷...もとい破損箇所ならもう修復が始まってますよ。ほら(左手を差し出す)、つながりかけてるでしょう?」

「(の左手をじっと見て)...そうね。ん?『つながり』かけてる?」

「はい。指を切り離してしまったので」

「ええっ!大丈夫だったの!?」

「はい。すぐにくっつけましたし、手を切ってしまう可能性を考えて、神経回路も一時切り離してましたから」

「(眉をしかめながら)...痛みを感じなくさせたってこと?」

「はい」

、それやめなさい」

「?、それとは?」

「痛みを感じなくさせることよ。痛みは体の不調を知らせる大切な感覚なんだから、絶対になくしちゃだめ。いいわね」

「はい、分かりました。約束します」












 <生き物編>




「アサヒさん、アサヒさん、アサヒさん!」

「どうしたの、?(かなり)珍しく慌てちゃって」

「変な卵見つけたんです!」

「変て...ああ、図鑑に載って無かったてこと?家においてあったのは、結構古かったから新種として他のに載ってるかもしれないけれど」

「ええと、でも、この世界に足の生えた卵ってあるんですか?」

「...足の生えた卵?」

「足の生えた卵です」

「卵の中から出てるんじゃなくて?生えてるの?」

「はい。卵にひび割れは見られませんでしたし、爬虫類のような足が出たり入ったりしていました」

「...爬虫類の卵だったの?」

「いいえ、鳥の巣の中にありました。それに基本的な特徴は鳥の卵と同じでしたよ」

「...(考え中)...カメラを持ってくるから、ちょっと待ってて頂戴」

「はい」



5分後



「お待たせ。いきましょう」

「はい。こっちです」




一週間後




、この間の卵の結果が届いたわよ」

「あれが何か分かったんですか?」

「(手紙を見ながら)新種のトカゲですって。『卵に擬態して、巣の中に紛れ込み、鳥の卵を食べているのではないでしょうか』ですって」

「え!あれで擬態してたんですか!?」

「?、どういうこと?」

「表面の構造とか、中心部の温度とか、巣の底にかかってる重量とか、違うところがたくさんありましたよ」

「...いいのよ、大抵の生き物はそこまで見抜けないんだから」

「そうなんですか?」

「そうなのよ。そうじゃなかったら、はじめから擬態なんて出来ないじゃない」

「なるほど」










 <気候編>




「今日もかなり暑いわね。湿度も高くて、空気がまとわりついてる感じだわ」

「でも、まだ朝ですからこれでもましな方ですよ」

「言わないで...考えないようにしているんだから...」

「すいません」

「(はぁ)この家にもクーラーがほしいわね」

「でも、そのためには発電機を買い直さなければいけませんよ。設置や改造なら私が出来ますけど、さすがに運搬だけで一ヶ月近くかかりますよ。いろいろ手続きが必要なようですし」

「そうなのよねぇー。ここって自然保護地区だしねぇー」

「...アサヒさん、話し方が変わってますよ」

「しょうがないでしょう。無駄に暑いんだから!」

「...暑すぎるといらいらするって言う話は本当なんですね」

「そんな話どこで聞いたのよ」

「そこの本棚の2段目左から6冊目の本です」

「...(はぁー)私で本の内容を検証しないで頂戴」

「分かりました。ところで、アサヒさん」

「何?」

「私の体温を調節すれば、この部屋くらいの広さなら冷やせますよ。体温を‐10〜40℃まで変化させることが出来ますから」

「...、そういうことは早く言って!」











 <パソコン編>




...ウィィィィィィーン...ウィィィィィィーン...ウィィィィィィーン...



「?、何この音?」

「この間、ビスケさんが持ってきてくれたノートパソコンですよ。いろいろな情報を、自動収集して私(の電脳)に転送するようにしたんです」

「(顔をしかめて)ああ、あれね。ビスケも、なんであんなものもってくるんだか...」

「でも、今まで以上に情報を入手出来るのでうれしいですよ」

「そういえば、ビスケが来る前から家にある本を片っ端から読み漁ってたわね。一週間で読み終わらせてたけど。そんなに知識がほしいの?」

「別に知識は要らないですよ」

「じゃあ、何でそんなに情報に固執してるの?」

「固執してるというか...私の『行動理念』と言ったほうがいいかもしれませんね」

「『行動理念』って少し大げさじゃない?」

「『固執』も十分大げさだと思いますけど。まぁ、私が造られたときにプログラムの基礎として出された命令が、『ありとあらゆる有益な情報を入手すること』ですから」

「命令って、まだそんなもの守ってるの?」

「いけませんか?新しいことを知っていくっていうのは楽しいですし。それに、実際に経験しないと分からないことがあるって知ったのも、この命令があったからなんですよ。」

「...しょうがないわね。大目に見といてあげるわ」

「ありがとうございます。あ、アサヒさんが前に言ってた猛毒植物の苗木がゾルディック家の庭に植えられるそうですよ」

「.........(これも『手に職』といえなくもないわね)」





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